文学

井上ひさし死去

私のいた高校に井上ひさしが講演にやってきたことがあった。しかし私は講演を欠席してしまった。母は講演を聞きに行ったので、母からその当時のことを言われ、講演があったと思い出した。その日のことを詳しくは覚えていないが、はっきり覚えているのは、私…

縮図することと<近親憎悪>と理会することの同一性

大西巨人『縮図・インコ道理教』はこう結ばれている。 かくて、「宗教団体インコ道理教は、『皇国』日本の縮図である。」という命題と、「宗教団体インコ道理教にたいする国家権力の出方を、人が、〈近親憎悪〉なる言葉で理会する。」という命題とは、いかに…

言い難き歎き持て

という言葉の意味が分かってきたような気がする。

Suburban Fiction

島田雅彦やJ.G.バラードを見るとよく分かることだが、SFの想像力とは郊外的なものである。他方、ミステリは地方的なジャンルといえよう。横溝正史ではそのことは明白だし、大都会の風俗を背景とした江戸川乱歩も三重に生まれ名古屋に育った。

人文学と批評の運命

ロンドン大学キングスカレッジの人文系教員が削減されることがtwitterでかなり注目されていたのを先日見た。抗議署名が集められてもいるようだが、抗議という手段以前に、講義というメディアが必要とされない、というのが人文学のみならず大学アカデミズムの…

文学のふるさと

を見た思いがする。 坂口安吾「文学のふるさと」

The Domestic World

島田雅彦『ひなびたごちそう』を読み始めると、何だか村上龍のエッセイを思い出す。政治・経済を論じる村上龍と家政学的世界観をつづる島田雅彦が、一対のような気がする。そして私は島田雅彦の方が好きだ。村上龍も美食家ではある訳だが、村上龍に限らず美…

Philosophy & Peace

『atプラス』最新号を読むと、東浩紀が、日本には物語の長い伝統があるからこそ、文芸批評において哲学が可能だった、自分もサブカルチャー批評として同じことを行ってきた、と語っている。しかし、「源氏〈物語〉」という歴史はあるけれども、それがまず何…

Interpretation is a war. Translation is a job.

『サリンジャー戦記』、自らの翻訳に「戦」などという言葉を遣う物書きの言語感覚は、疑わしい。柴田元幸は本郷三丁目駅で何度か見かけた。村上春樹は見たことがない当然。 翻訳とは何より「仕事」(job)だ。そして、「戦」があるのは、名も知られぬ翻訳者…

ソフィアの鐘

さだまさしはアルバム『おもひで泥棒』のライナーノーツで収録曲「ソフィアの鐘」についてこう書いている。 かつて僕は、御茶ノ水を舞台に『檸檬』という青春歌を書いた。故に、この歌をその続編と捉える向きもあるかもしれないが、そうではない。 これは不…

詩・死・私

松本博文氏はこう書いている(twitter@mtmt81より)。 昨日の深夜からは結局徹夜で、詰将棋を作っていた。人から頼まれた仕事は短篇数題だが、勢いで中篇の趣向作など試行錯誤してみたり。缶ビール飲みながらの指し将棋は確実に棋力が落ちるが、詰将棋創作…

For Publication

小説家は公人。この考えは古いか。実際1970年代以降、小説家の多くはその考えを無意識的に否定してきただろう。また例えば小説家の「不倫」に昔ながらの道徳を求めるのは意味が薄い。「不倫」は世間でも当たり前になってしまったし、非道徳的とすら必ずしも…

弁当・将棋・短詩

先日発売された第3巻を含め、羽海野チカ『3月のライオン』には弁当の話が頻繁に出てくる。『3月のライオン』自体がシリアスとギャグの詰め合わせ弁当のようでもある。李御寧が『「縮み」志向の日本人』で述べる通り、弁当は実は日本料理の典型だ。例えば鮨に…

A Quiet Life

What is Oe's "quietness"? It is not a silence but a tranquilization. And, however, Oe's tranquilization is unique, which is not a healing(癒し), but connects to a truce. 静=会意兼形声。「爭(とりあい)+⾭(音符)」。⾭(=青)は、すみきっ…

胸キュン

君に胸キュン 愛してるって 簡単には言えないよ (Yellow Magic Orchestra「君に、胸キュン。」[作詞:松本隆]) 「簡単には言えない」。だから、松本隆は(高橋幸宏は)「胸キュン」と言った(歌った)。それは表現上の努力である(「胸キュン」と造語し…

바둑은 제미있어요.

韓国語(朝鮮語)を習い始めるのには、語学を身につけ韓国に行き日本式将棋を広められたらいいなあ、という夢、というか野心もほんの少しだけあった。棋力も他人に何かを教える力も低いというのに……。中国では熱心に普及活動が行われているようだが、韓国で…

Tiananmen Square protests of 1989

五日 九時半起床。晴。一日テレビ見る。6チャンネル、十時のニュース、鎮圧のフィルムの最後に中島みゆきの「シュプレヒコール」をながす。 (高橋源一郎『追憶の一九八九年』) 今朝の私も9時半起床。20年前は小学6年生だった。激動の一年、という言葉が遣…

butterfly effects

松本博文さんの写真と立原道造の詩による「緑蝶」。 バタフライ効果という言葉を連想させる世界。