弁当・将棋・短詩

 先日発売された第3巻を含め、羽海野チカ3月のライオン』には弁当の話が頻繁に出てくる。『3月のライオン』自体がシリアスとギャグの詰め合わせ弁当のようでもある。李御寧が『「縮み」志向の日本人』で述べる通り、弁当は実は日本料理の典型だ。例えば鮨に関して生魚を食べることの世界的な珍しさが指摘されるが、朝鮮半島でも刺し身は食べる。ただ鮨のような「圧縮」が日本独特の文化なのだ。弁当は食=世界の凝縮であり、そして日本式の将棋が狭いフィールドに複雑怪奇な「盤上の海」を生成することと並行している。もちろん、日本の詩人たちが短詩型的な「詩の宇宙」を誕生させてきたこととも。羽生善治と対談した吉増剛造は「現代詩」の人だが、吉増作品にも短詩型的な世界の「圧縮」への志向が根本にある。

3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

「縮み」志向の日本人 (講談社学術文庫)

「縮み」志向の日本人 (講談社学術文庫)

盤上の海、詩の宇宙

盤上の海、詩の宇宙