ソフィアの鐘

 さだまさしはアルバム『おもひで泥棒』のライナーノーツで収録曲「ソフィアの鐘」についてこう書いている。

かつて僕は、御茶ノ水を舞台に『檸檬』という青春歌を書いた。故に、この歌をその続編と捉える向きもあるかもしれないが、そうではない。

 これは不思議な文である。2つの曲の歌詞を読んでいる限りでは、御茶ノ水、四谷(「ソフィアの鐘」の舞台)の地名に限らず、青春という主題があからさまにつながっているからだ。しかし、やはり続篇ではないということが、私は分かる気がする。私の考えでは、さだまさしは「檸檬」という曲があまり好きではないのだ。あの作品はあまりに「さだまさし的」過ぎた(梶井基次郎の巧みな「引用」、それに相応するメロディ、アレンジ)。むしろそれを乗り越えるために、さだまさしは「ソフィアの鐘」を書いたのだ、という気がする。そしてそれは成功していると、この季節に「ソフィアの鐘」をたまたま聴き直すことになり、感じた。

おもひで泥棒 プライス・ダウン・リイシュー盤

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