創造行為とは何か

世で「クリエーター」(創造者)と自称し、他称される人たちの間では、ここ10年余り、「化学反応」がキーワードだ。それは、生物学的な、何かを「生む(産む)」(production)時代を「超え」、既に存在するaとbを組み合わせxを生成するアレンジメントこそが創造であるという考えである。世俗的な「クリエーター」が超俗的なポストモダン思想に追いついたのか? しかし、化学者が新たな物質を創り始めたのは19世紀に遡るし、手術台、ミシン、蝙蝠傘の邂逅も、20世紀初頭の逢瀬である。
21世紀の創造性は、化学的というより物理学的な方向にあるだろう。僅かに具体的にいえば、エネルギーの「反応」からエントロピーの「不確実性」へ。