1989

 『小説トリッパー』最新号の1989年特集で、かつて『89』を書いた橋本治が、結局日本人は昭和天皇の死で「アタマ」を失ったのでしょ、と語っている。私は橋本に同意する。言い換えれば、日本人は、各個人が自らに「アタマ」を持たずに済んできたのだと思う。
 私はその当時まだ小学生だったから、自分自身という「アタマ」をこれからつくろうとしていたところだった。でも昭和天皇という「アタマ」を長い間必要としてきた大人たち、もいたのだ。そうした大人たちが、細川護煕小泉純一郎昭和天皇の代わりの無責任な「アタマ」として奉ってきたのだろうし、「アタマ」の追憶を求めて日の丸や君が代にすがってきたのだろう。

小説 TRIPPER (トリッパー) 2009年 6/30号 [雑誌]

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